楢川分団第3部部長、ラッパ隊…。
百瀬市長の消防団員の思い出

- 市長の消防団入団時の活動について教えてください。

私は平成5年から平成28年までの23年間、塩尻市消防団の楢川分団第3部に所属し、最後は部長を務めました。またラッパ隊にも所属していました。

私が生まれ育ったのは贄川(にえかわ)地区。楢川分団が管轄する地域は木造建築が密集しており、ひとたび火災が起きれば大火につながる危険性を抱えています。そのため、地域全体の防災意識も非常に高く、火災発生時には消防団による初期対応が極めて重要です。そうした地域で育ったこともあり、私自身も自然な流れで消防団に入団しました。

- 消防団に入ることで得ることのできた、地域や人との関係性について教えてください。

消防団は誰でも入ることができて、人と人とのつながりで成り立っている組織だと思います。消防団に入ったからこそ得られた出会いが、たくさんありました。詰所ではみんなで談笑したり、年末警戒が終わったあとにゲームをして過ごしたりするなかで、関係性が深まっていきました。

ラッパ隊の活動を通しても、さまざまな地域で活動する団員と出会うことができました。当時から付き合いのある団員のなかには、今も現役で、分団長や部長といった役職に就いている人も多くいますが、今でも気さくに話せる関係です。
「ラッパ吹奏大会」や「春の火の用心コンサート」に向けて、みんなで何度も練習を重ねたことも良い思い出です。私の生まれ育った贄川地区には御柱祭があり、そこでラッパを吹けたのも嬉しい経験でした。

「久しぶりにラッパを吹いてみたけど、意外と吹けるもんだ」と市長
「久しぶりにラッパを吹いてみたけど、意外と吹けるもんだ」と市長

- 消防団ではコミュニティを築くことができそうですね。一方で、地域を守る活動として特に記憶に残っている出動について教えてください。

まず、平成18年7月の豪雨です。楢川地区が土石流に襲われ、床上・床下浸水や建物の全壊などが発生し、多くの住民が避難を余儀なくされた、命の危険を強く感じた災害でした。

そんななか私たち消防団は、土のうの作成や溜まった水のポンプ排水、警戒などの活動にあたりました。土のうに使う砂は、最初は保育園の砂場から調達しましたが、それも底をついてしまい、最終的には建設会社に分けてもらいました。夜通し延々と土のうを作り、少しでも被害を食い止めようと必死でした。

あとは平成22年の贄川駅前の火災。私は部長として出動しました。指示を出しながら消火活動に取り組みましたが、地元でいつも当たり前のようにあった景色が燃えてしまうのを見るのは、とてもつらく、悲しい出来事でした。

塩尻の消防団らしさは「つながりが強いこと」

- 塩尻市消防団らしさは、どのようなところにあると思いますか?

団員同士が仲良くやっている空気が日々感じられていますし、分団長や部長などとも非常にうまくコミュニケーションを取ってくださっています。それによって非常に強い組織体となっていて、団員同士のつながりが強いところだと思っています。普段は和やかですが、関係性と指揮命令系統がしっかりしているので、いざというときには迷わず動けるのです。

- 塩尻市が主催する「しおじり消防防災フェスタ」のような大きなイベントも開催されていますね。

11月に小坂田公園で開催されている「しおじり消防防災フェスタ」は、塩尻市消防団の皆さんの力があってこそ実現できています。団員たちは「市民の皆さんや子どもたちと直接関われることが楽しい」と笑顔でそれぞれの役割を担ってくれています。これほど規模の大きなイベントは、近隣地域ではほかになく、まさに突き抜けたイベントだと思います。

子どもたちにさまざまな体験をしてもらい、消防団を身近に感じてもらうことは、とても大切です。すぐに結果が出るものではありませんが、10年後、20年後に「子どもの頃、フェスタで消防団の大切さを知って、消防団に入りました」というような声が聞こえるようになることを期待しています。保育園や小学校に出向いている出張授業も、同じく大事にしています。

団員たちは、みんな笑顔で子どもたちに対応してくれました
団員たちは、みんな笑顔で子どもたちに対応してくれました

塩尻市で必要とされる消防団へ。活動の期待

- 塩尻市消防団への期待について教えてください。

塩尻市は、市街地、農業地域、山間地など、非常に多様な地形を有しています。そのため、地域ごとに求められる消防団の役割も異なります。消火活動に限らず、秋のキノコ採りシーズンにおける遭難者の捜索や、豪雪への警戒、宿場町に残る木造建築が密集した地域での初期消火など、地域の特性に応じた活動が求められています。
また、三九郎や神事など、火を用いた地域の伝統行事を安全にできるように見守ることも、消防団の大切な役割のひとつです。こうした活動を通じて、市民の皆さんの安心・安全な暮らしを支えてくださっている消防団の存在に、大きな期待を寄せています。

今後、超高齢化社会が進む中で、地域コミュニティの希薄化も課題となっています。そのような時代だからこそ、消防団を通じて生まれる地域のつながりや、助け合いの力は、ますます重要になると考えています。
災害対策においては、まず自分や家族で備える「自助」が基本となりますが、その次に必要となるのが、地域や近隣で支え合う「共助」です。避難所が開設された際にも、活動服を見ればすぐに分かる消防団は、住民にとって心強い存在です。その「共助」の柱として、地域を支えていただくことを期待しています。

いざというときのために訓練を積んでいます
いざというときのために訓練を積んでいます

市長から、消防団担い手へのメッセージ

- 消防団に興味をもっていただいた方にメッセージをお願いいたします。

ご興味をもっていただき、ありがとうございます。消防団の活動は誰でも参加ができて地域に貢献できる、とても意義のあるものだと感じています。

また、活動を通して、日常生活でも役立つ知識や技術をたくさん身につけることができます。実際に私は、市長になってから一度だけ119番通報をしたことがありますが、消防団で救急救命講習を受けていたおかげで、慌てずに対応することができました。呼吸をしているか確認したり、声をかけたりしながら、冷静に次に何をすべきかを考えられたと思います。

AEDの使い方をはじめ、ポンプや消火器、消火栓の扱い方なども活動を通して身についていきます。キャンプが好きな方なら、ロープの結び方が役立つ場面もありますし、もしかしたらラッパが吹けるようになるかもしれませんね(笑)。地域のために役立ちながら、自分自身の力にもなる。消防団にはそんな魅力があります。

- 今、消防団として地域でご尽力いただいている方に向けてメッセージをお願いいたします。

まず何よりも大切にしてほしいのは、ご自身の安全と健康です。
消防団の活動はもちろん大切ですが、普段の本業があり、ご家庭があり、そしてそれぞれの立場や事情があります。そのなかで、いくつもの役割をうまく調整しながら活動してくださっていることに、心から感謝しています。

消防団も、時代とともに多様化しています。かつては「消防団員=男性」というイメージが強くありましたが、塩尻市では女性団員も年々増えてきています。一方で、現在の詰所は、どうしても男性目線でつくられている部分が多いのが実情です。だからこそ、これからは男女を問わず、誰もが使いやすい消防団の拠点となるよう、まずは詰所環境を整備していきたいと考えています。

塩尻市としても、消防団員の皆さんが活動しやすいように、しっかりとサポートしていきます。これからもよろしくお願いいたします。

取材日 令和7年12月12日
写真・編集 山田智大
原稿 竹中唯