楢川分団は、塩尻市の南西部に位置し、平成17年の編入合併によって塩尻市の一部となった旧楢川村地区を管轄しています。塩尻消防署や広丘消防署からは距離があるため、木曽広域消防本部とも連携して有事に備えています。
木造の長屋が軒を連ね、江戸時代の宿場町の面影を色濃く残す町並みで知られているのが、「奈良井宿」と「贄川宿」です。また「木曽平沢」では、木曽漆器を生業とする職人が多く暮らし、工房と店舗が一体となった独特の景観が形成されています。このような特徴から、奈良井宿と木曽平沢は「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されています。
美しい景観が評価される一方で、木造建築が密集することで大火につながるリスクを抱えていることから、古くから防災意識が非常に高い地域としても知られています。この景観が守られてきた背景には、地域の方々が長い年月をかけて積み重ねてきた努力と、「この町を守り続けたい」という強い想いがあります。
伝統文化を、地域の暮らしを、守りきる存在
「重要伝統的建造物群保存地区」(重伝建地区)とは、歴史的な町並みと周辺環境が一体となった「歴史的風景」を形成し、その価値が特に高いと選定された地区のことです。文化財保護法に基づき、市町村が住民と協力して保存・活用を進めています。特に奈良井宿では、まち並みに溶け込むようにデザインされた消火栓が、狭い間隔で配置されています。格納されているホースは細型で、女性や高齢者でも扱いやすい仕様です。

一般の消防団活動に加え、地域独自の団体である「婦人消防隊」と、OB団員が所属する「機能別消防団員」が活動しています。
婦人消防隊は、火災予防の広報活動などを通じて、暮らしに身近な立場から地域の安全を支えています。一方で機能別消防団員には、長年の経験を積んだOB団員が所属し、いざという時にはその知識と技術を生かして現役団員を支援します。こうした活動によって、楢川地区では世代を越えて防災の力が受け継がれています。

宮原さん(職人)
漆器職人として地元にUターンしたタイミングで声をかけてもらい「地場産業に携わるのだから」と入団しました。この地域は消防署から距離があり、住宅も密集していますので「万が一のときにすぐに駆けつけられる消防団の存在は欠かせない」と、暮らすなかで実感していました。
操法訓練では、水の確保から放水まで、消火活動の一連の流れを基礎から学びました。正直なところ、最初は「大変そうだ」と思いましたが、仲間と一緒に繰り返し取り組むうちに、少しずつ形になり、気づけば夢中になっていました。やりきったあとの達成感は大きく、今では良い思い出です。
そして消防団には、年齢も職業も立場もさまざまな人が集まっています。普段の生活では出会えなかった人たちと知り合い、横のつながりだけでなく、世代を超えた縦のつながりができるのも魅力のひとつです。
取材日令和6年10月3日